前回の記事で植物の分類について簡単な記述を行ったので、今回の記事では動物の分類について述べることにしようと思う。現代の系統分類学の知識を借りて、動物の起源からヒトに至るまでの種分化と系統を述べるのも悪くはないが、それは初学者向きではない。ここでは我々に身近な動物の方から、原始的な動物に遡っていくように説明してみよう。
まず、当たり前だが我々ヒト、つまりはホモ・サピエンスが存在する。ヒト属と呼ばれるグループに所属する種だが、実のところヒト属の動物は我々ヒト以外存在しない。かつてはホモ・エレクトスやネアンデルタール人なども別の種として存在していたが、これらは全て絶滅してしまった。ヒト属はさらにヒト科と呼ばれるより大きなグループに属している。ヒトに最も近しい動物であるチンパンジーやゴリラ、オランウータンなども同じ仲間となる。ヒト科は更に大きなグループである霊長目に属する。いわゆるサルと呼ばれる動物は全てここに属している。
霊長目は哺乳類と呼ばれるグループに属する。受精卵が母親の体内でふ化し幼児の姿で生まれる胎生と、母親が乳をあげて幼児を育てていくのが特徴である。我々が普段ペットや家畜として接している動物のほとんどがこのグループにいる。犬、猫、馬、牛、豚などの身近な動物のほとんどが哺乳類の動物である。
ここまで我々ホモ・サピエンスから種-属-科-目-類とそのグループ領域を広げてきたが、ここで一旦、他の類の動物も見てみよう。ワニやトカゲ、カメなどの四足歩行で陸上を移動し、卵を産む動物は爬虫類と呼ばれる。またハトやカラスなど羽毛を持ち二足で歩行するのは鳥類である。
哺乳類・爬虫類・鳥類は地上で肺呼吸をして活動するが、そうではない動物たちもいる。海や川などで一生の間えら呼吸をして泳いで生活するのは魚類である。また両生類と呼ばれる動物たちは、ある期間だけ水中でオタマジャクシとして鰓呼吸の生活をしたのちに陸上で肺呼吸の生活をするカエルのように、鰓呼吸と肺呼吸さらに皮膚呼吸などを別々の時期に使い分けて生活する。
これら哺乳類・爬虫類・鳥類と両生類・魚類には共通した特徴がある。それぞれの動物の体を解剖すると分かることだが、全て脳とそれを守る頭蓋骨を持ち、そこから体の下部に向かって脊髄とそれを覆う硬い骨の脊椎が背筋に沿って通っているのだ。このように、脊椎を持つ動物を脊椎動物という。
中学理科では、全ての動物はこの脊椎動物とそうではない無脊椎動物に分類される。しかし、現代の系統分類学ではより複雑な分類がなされている。
まず脊椎動物は脊索動物門と呼ばれるグループに属する。脊索とは胎児のとき脊椎ができる前に背筋を支える組織のことを指す。従ってこの組織が一生のうちのどこかで存在している動物は全てこの脊索動物門に属する。脊椎動物ではない、脊索動物としてはナメクジウオやホヤなどかいる。
それ以外の無脊椎動物だが、実はこの脊索動物門と同じ階級の門があと33個ある。とはいえ、ほとんどの門は種数が1000程度であり、我々の生活で身近に観察できない者も多い。
種数で言えば、圧倒的な数を誇る節足動物門、脊索動物と同程度の種数を有する軟体動物門の2つが他に我々にとって身近な無脊椎動物のグループであろう。
節足動物門はクモ類やサソリ類などの鋏角亜門、ムカデ類などの多足亜門、カニ類やエビ類などの甲殻亜門に、昆虫たちが属する六脚亜門の計四亜門に分類される。亜門というのは門よりは小さいが類よりは大きいグループ分けの階級のことだと思えばよい。これら節足動物は脊椎動物の繁栄以前は地球上で最も繁栄を極めた動物たちで、未だに昆虫は陸上で他の脊椎動物たちにも劣らない多様な進化を遂げている。
軟体動物門には、イカやタコなどの頭足類の他、数多くの貝が含まれる。元々はイカやタコなどの祖先も他の貝と同様の殻を持っていたようだが、進化の過程で退化し無くなってしまったらしい。
まとめると、動物は魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類で構成される脊椎動物とそれ以外に分けられる。最新の系統分類学では、脊椎動物は更に脊索動物門というグループに属し、他に33の門が存在しているが、身近なところでは無脊椎動物としては昆虫や甲殻類の動物を含む節足動物門と、イカやタコや貝の仲間たちを含む軟体動物門がメジャーである。
昔の人々が用いていた分類体系も、基本的にはこのアウトラインとほぼ変わらない。動物学の創始者で哲学者でもあるアリストテレスの場合、動物の分類では驚くべきことに、脊椎動物と無脊椎動物の区別を正しく設けている。この区別はアリストテレス以降常に命脈を保ち続けている。彼の分類体系では、両生類と爬虫類が同じ仲間とされているが、ヤモリとイモリの区別の難しさなど考えると無理はない。無脊椎動物の方はどうだろう。アリストテレスは無脊椎動物を、貝などの硬い殻を持つグループ、昆虫など節を持つ虫のグループ、エビやカニなどの柔らかい殻をもつ甲殻類のグループ、そしてイカやタコなどの軟体動物のグループの四つに分けられている。これは先ほどあげた節足動物門と軟体動物門の動物をほぼカバーしている。
結局のところ、便宜性だけでいえば、我々が日常生活レベルで見ることのできる身近な動物の分類は、動物学の創始者アリストテレスの時代には既に確立していたと言ってよい。彼の分類体系が長年に渡って命脈を保ち続けてきたことを鑑みても、その観察眼と視野の広さ、洞察の深さには敬服してしまう。アリストテレス、恐るべし、だ。